茨城県いばらきけん鹿嶋市かしましにある鹿島かしま宇宙うちゅう技術ぎじゅつセンターは、情報通信じょうほうつうしん専門せんもん研究けんきゅうする情報じょうほう通信つうしん研究けんきゅう機構きこう(NICTエヌアイシーティー : National Institute of Information and Communications Technology)という公的こうてき研究機関けんきゅうきかん一員いちいんじゃ。
昭和しょうわ39年10月の東京とうきょうオリンピックでは、世界せかいはじめてオリンピックの国際衛星こくさいえいせいテレビ中継ちゅうけい成功せいこうして、本格的ほんかくてき衛星通信えいせいつうしん電波天文でんぱてんもん研究けんきゅう開始かいししたんじゃ。

世界初せかいはつのオリンピック中継ちゅうけい
昭和しょうわ39年(1964年)10月

オリンピックをテレビ放送ほうそう中継ちゅうけいすることは、世界中せかいじゅう人々ひとびとねがいでした。
鹿島宇宙技術かしまうちゅうぎじゅつセンター(当時とうじ名前なまえ電波でんぱ研究所けんきゅうじょ)は、アメリカが太平洋上たいへいようじょうげた静止衛星せいしえいせい(くわしくは『ことばのハテナ』で)シンコム3ごうをテレビ中継用ちゅうけいよう使つかうためにあたらしい技術ぎじゅつ開発かいはつなどをいそいですすめました。
本番ほんばんでは、映像えいぞうをマイクロ回線かいせん代々木よよぎ(NHK)から電波でんぱ研究所けんきゅうじょまでおくり、直径ちょっけい30mのパラボラアンテナでシンコム3ごうけて発射はっしゃしました。衛星えいせいはその電波でんぱ受信じゅしん、さらに強力きょうりょくにして発射はっしゃし、アメリカ太平洋岸たいへいようがん直径ちょっけい26mパラボラアンテナが受信じゅしんしました。この画像がぞう信号しんごうはアメリカ各地かくちやヨーロッパ各国かっこくおくられ、世界初せかいはつのオリンピックテレビ中継ちゅうけい大成功だいせいこうをおさめました。

CS(通信衛星つうしんえいせい)・BS(放送衛星ほうそうえいせい)の実用化じつようか 昭和しょうわ50年(1975年)ごろから

いまではとてもきれいな映像えいぞうでたくさんの番組ばんぐみたのしむことができるテレビ放送ほうそうですが、昭和しょうわ39年(1964年)に東京とうきょうオリンピックの衛星中継えいせいちゅうけい成功せいこうすると、国産こくさん衛星えいせい通信つうしんシステムの実用化じつようか目指めざしてCS(通信衛星つうしんえいせい)・BS(放送衛星ほうそうえいせい)が次々つぎつぎげられました。その実用化じつようか実験じっけん基地局きちきょくとなって中心的ちゅうしんてき役割やくわりをしたのが電波でんぱ研究所けんきゅうじょでした。
とくに、1977年にげられた日本初にほんはつ静止衛星せいしえいせい(くわしくは『ことばのハテナ』で)技術ぎじゅつ試験しけん衛星えいせいIIがた「きく2ごう」/ETSいーてぃーえす-ツーでは、ミリという電波でんぱなかでも強力きょうりょくで、無線むせん通信つうしん主役しゅやくになる電波でんぱつたわりかた調しらべる実験じっけんおこないました。ミリあめでさえぎられたり、みだれたりしたデータは画期的かっきてきなもので、その衛星通信えいせいつうしん計画けいかくにもおおいに役立やくだちました。

日本初にほんはつVLBIブイエルビーアイ実験じっけん
昭和しょうわ52年(1977年)ごろから

鹿島宇宙技術かしまうちゅうぎじゅつセンターは、人工衛星じんこうえいせい使つかった通信つうしん発達はったつ貢献こうけんしただけではなく宇宙うちゅう電波でんぱ使つかった天文てんもん分野ぶんや研究けんきゅうでも功績こうせきのこしてきました。
そのひとつは、VLBIブイエルビーアイという、はるか数十億すうじゅうおく光年こうねん彼方かなたから地球ちきゅうとど電波でんぱ利用りようして、数千すうせんkmキロメートルとおはなれた場所ばしょ距離きょりを、わずかすうmmミリメートルのちがいもなくはか測量技術そくりょうぎじゅつです。(くわしくは『ことばのハテナ』で。)

最新さいしん日本地図にほんちずのもとになったアンテナ 平成へいせい14年(2002年)

平成へいせい14年(2002年)、国土地理院こくどちりいんにより日本にほん土地とちはかとき使つか緯度いど経度けいど基準きじゅん変更へんこうされて、鹿島宇宙技術かしまうちゅうぎじゅつセンターの26mメートルアンテナの位置いちあたらしい基準きじゅんになりました。
やく15年間ねんかんにわたる国際こくさいVLBIブイエルビーアイ観測かんそくによるこのアンテナの功績こうせき評価ひょうかされたからです。このアンテナはすでに役目やくめえて姿すがたしましたが、日本地図にほんちず歴史れきし名前なまえのこしました。

ワールドカップで国際こくさい高速こうそく送信そうしん実験じっけん
平成へいせい14年(2002年)

2002年のFIFAワールドカップで鹿島宇宙技術かしまうちゅうぎじゅつセンターは、日本にほん韓国かんこくおこなわれたサッカーの試合しあい高速こうそく衛星えいせい通信つうしん使つかって国際中継こくさいちゅうけいし、超大画面ちょうだいがめんうつ実験じっけんおこないました。まるでスタジアムで観戦かんせんしているかのような3めんパノラマハイビジョン映像えいぞう実現じつげんすることができました。
高速こうそく衛星えいせい通信つうしんはたくさんの情報じょうほうをすぐにつたえる技術ぎじゅつとして開発かいはつすすめられています。

東日本ひがしにほん大震災だいしんさいでの被災地ひさいち支援しえん活動かつどう
平成へいせい23年(2011年)

平成へいせい23年(2011年)3月11日に発生はっせいした東日本ひがしにほん大震災だいしんさいでは、はげしいれや津波つなみ被災地ひさいち通信つうしん基地局きちきょくこわれて電話でんわやメールなどが使つかえなくなりました。
被災地ひさいち通信つうしんすくうために東京とうきょう消防庁しょうぼうちょうから鹿島宇宙技術かしまうちゅうぎじゅつセンターに要請ようせいがあり、超高速ちょうこうそくインターネット衛星えいせい「きずな」(WINDSういんず)を利用りようすることが決定けっていしました。3月14日-19日まで気仙沼けせんぬまへ、3月20日-22日まで松島まつしまき、WINDSういんず回線かいせん提供ていきょうして被災地ひさいち情報じょうほう収集しゅうしゅうなどに役立やくだちました。

情報通信(じょうほう つうしん)

むかしは情報じょうほうつたえるのにとても時間じかんがかかっていました。かみいたものを飛脚ひきゃくばれる運送屋うんそうやさんが自分じぶんあしうま使つかってはこんでいたのです。いま、わたしたちは、電話でんわをしたり、メールをしたり、ネットショッピングをしたり…とおはなれたひとおおくの情報じょうほう一瞬いっしゅんつたえる(通信つうしんする)ことができます。
情報じょうほうおもさもかたちもありませんが生活せいかつくてならないものです。この情報じょうほうを「いつでも、どこでも、だれとでも」やりとりができる社会しゃかい目指めざしてわたしたちは研究けんきゅうしています。

静止軌道(せいし きどう)

ボールをげるスピードをどんどんはやくすると、ボールはよりとおくまでんでいきます。もし時速じそくやく28,400km (秒速びょうそくやく7.9km)でボールをげれば、地面じめんちずに地球ちきゅう一周ひとまわりしてもどってきます。ボールにあたえられたスピードによって発生はっせいした遠心力えんしんりょく地球ちきゅう引力いんりょくって地表ちひょうちてこなくなるのです。これが人工衛星じんこうえいせい原理げんりです。

人工衛星じんこうえいせいには地上ちじょうちかいところをまわっているものや、とおいところをまわっているものがあります。地上ちじょうからやく36,000kmの人工衛星じんこうえいせいとおみち静止軌道せいしきどうといいます。地上ちじょうからたかくなればなるほど引力いんりょく影響えいきょうちいさくなるので、それだけスピードがひくくなり、地上ちじょうからやく36,000kmはなれた静止軌道せいしきどうまわ人工衛星じんこうえいせい時速じそくやく11,000km(秒速びょうそくやく3.07km)でまわっていて、1にち地球ちきゅうまわりを一回転いっかいてんします。地球ちきゅうも1にち一回転いっかいてんしているので、この軌道きどうまわ人工衛星じんこうえいせい静止衛星せいしえいせい)は地上ちじょうからるとまっているようにえます。静止軌道せいしきどうは、いつもおな場所ばしょにいて地上ちじょう観測かんそくしなければいけない気象きしょう衛星えいせい放送ほうそう衛星えいせい通信つうしん衛星えいせい使用しようされています。
宇宙うちゅう飛行士ひこうし実験じっけんをしている国際こくさい宇宙うちゅうステーション(ISSアイエスエス)は、静止軌道せいしきどうよりもひく高度こうど300〜500kmのところを時速じそくやく27,600km (秒速びょうそくやく7.7km)でまわっていて、飛行機ひこうきの30ばいちかいスピードで1にち地球ちきゅうまわりを16かいまわります。

VLBI(ブイエルビーアイ)

VLBIブイエルビーアイ(Very Long Baseline Interferometry:ちょう長基線ちょうきせん電波でんぱ干渉法かんしょうほう)とは、はるか数十億すうじゅおく光年こうねん彼方かなたにある電波でんぱはっするほしから放射ほうそうされる電波でんぱを、複数ふくすうのアンテナで同時どうじ受信じゅしんし、その到達とうたつ時刻じこくを1000億分おくぶんの1びょうちがいで精密せいみつ計測けいそくする技術ぎじゅつです。この到達とうたつ時間じかんから特殊とくしゅ計算けいさんによって観測かんそく地点ちてん位置いちかります。とても精密せいみつ観測かんそくができるので、数千すうせんkmキロメートルはなれたアンテナの距離きょりをわずかすうmmミリメートルのちがいではかることができます。

鹿島かしま宇宙うちゅう技術ぎじゅつセンターには直径ちょっけい34mのアンテナがあり、このVLBIブイエルビーアイ実験じっけん活用かつようされています。1990ねんには鹿島かしま34mアンテナとハワイ9mアンテナとのあいだVLBIブイエルビーアイ観測かんそくにより、ハワイが一年間いちねんかんに6.3cmうごいて日本にほんちかづいていることがわかりました。このように大陸たいりく移動いどうはかることができるので、巨大きょだい地震じしんこすプレート運動うんどう監視かんしなどに役立やくだっています。

VLBIブイエルビーアイについてはアンテナの紹介しょうかいページでもっとくわしくることができるよ

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